中国で流行中の「ショートドラマ」に規制の波
最近、中国で人気を博している短編ウェブドラマ、いわゆる「ショートドラマ」が規制の矢面に立たされることになりました。このドラマは1話あたり10分から15分程度の短い分量で制作されるのが特徴で、「覇道総裁」(バダオゾンツァイ、財力と容姿を兼ね備えたエリート男性)や「傻白甜」(シャーバイティエン、天然で無垢なヒロイン)といったキャラクターが頻繁に登場していました。しかし、こうした設定が今後は禁じられることになったのです。
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| 中国のショートフォームドラマで『イケメン財閥』役として よく出演する俳優、スン・ユエ |
中国の国家広播電視総局(以下、広電総局)は、「現実離れしており、論理的でない設定が刺激的な形で消費されている」として、規制の必要性を訴えました。特に、「権力者や富豪との結婚を賛美し、一夜にして成功しようとする誤った価値観を助長する内容は厳しく排除すべきだ」との見解を示しました。
これまでショートドラマでは、20代の若手富豪が40代の家政婦と恋に落ちたり、清掃員の女性がCEOと結婚を約束し巨額の金を受け取るといったストーリーが流行していました。しかし、これらが「中国の企業家イメージを損なう」という理由で問題視されたのです。
ネットの反応は賛否両論
中国のネットユーザーの間では、「とんでもないストーリーで再生数を稼いでいる」と批判する声がある一方で、「創作に対する過剰な干渉だ」と反発する意見も飛び交っています。また、広電総局は「覇道総裁」などの言葉をタイトルに使ったドラマを規制対象にすると発表しました。
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| 政府の規制を受けることになるドラマ |
こうした動きが強化された背景には、ショートドラマが中国国内で非常に高い人気を誇り、インターネット利用者の半数以上にあたる約5億7600万人が視聴しているという現実があります。特に45歳から64歳の中高年層が忠実な視聴者層の43%を占めており、社会的な影響力が増大していることも規制強化の要因となっています。
市場調査会社「iMedia Research」によると、2023年の中国ショートドラマ市場は500億元(約1兆円)を突破し、映画市場(549億元、昨年基準)に迫る規模になると予想されています。この人気ぶりを裏付けるように、昨年だけで中国では1000本以上のショートドラマが制作され、世界のショートドラマアプリ72個のうち、中国産が52個(72.2%)を占めているそうです。
刺激的な内容が当局の目に留まる
さらに、ショートドラマは一般的なテレビドラマで規制されるような「転生」や「シンデレラストーリー」、露骨な復讐劇などの刺激的なテーマを多く扱っており、当局の目には「不適切な社会風潮を助長する有害コンテンツ」と映る可能性が高いといえます。このため、中国文化界では、ショートドラマに対する追加的な規制が次々と導入されるだろうと予測されています。
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| 中国政府が視聴を推奨する愛国主義ドラマ |
実際、2023年5月25日付の共産党機関紙『人民日報』は、「『スカッと感』だけを追求するショートドラマは、社会問題や感情を過剰に煽る『増幅器』となってはならない」と批判しました。
規制を回避するための動きも
もっとも、制作会社が規制を回避するために努力している様子も見られます。例えば、ヒロインが自らの努力で起業し成功を収める場面を意図的に挿入することで、「シンデレラストーリー」という批判を避けようとする工夫がされています。
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| 規制を回避するために盛り込まれた主人公の貧しい時代の姿 |
中国文化界では、ショートドラマに対する規制がさらに強化されると見られており、これが今後のコンテンツ市場にどのような影響を与えるのか注目が集まっています。



